外国人社員が会社を退職するときは、日本人社員と同じ退職手続きだけで終わるとは限りません。外国人を雇用している会社には、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が必要です。さらに、外国人本人にも、在留資格によっては出入国在留管理局への届出が必要になります。
特に「特定技能」や「技能実習」の外国人が退職する場合は、通常の外国人社員とは別の手続きが必要になるため注意が必要です。
この記事では、社会保険の資格喪失や源泉徴収票の交付など、日本人にも共通する一般的な退職手続きは省き、外国人社員だからこそ必要になる手続きを中心に分かりやすく説明します。
外国人社員の退職が決まったら、まず会社で確認したいのが、
という点です。
なかでも重要なのが、在留資格と雇用保険への加入状況です。これによって、会社が行う届出の種類や期限が変わってきます。
外国人社員が退職した場合、原則として会社はハローワークに「外国人雇用状況の届出」をしなければなりません。これは会社の任意ではなく、労働施策総合推進法に基づく義務です。
届出を怠ったり、虚偽の届出をした場合には、30万円以下の罰金の対象になることがあります。
雇用保険に加入している外国人社員の場合は、通常の「雇用保険被保険者資格喪失届」に、在留資格や在留カード番号など必要な事項を記載してハローワークへ提出します。別に「外国人雇用状況届出書」を提出する必要はありません。
提出期限は、離職日の翌日から数えて10日以内です。
雇用保険に加入していない外国人についても、届出が不要になるわけではありません。この場合は、「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」または外国人雇用状況届出システムを利用して届出を行います。
提出期限は、退職した日の属する月の翌月末日までになります。たとえば、9月15日に退職した場合は、10月31日までが届出期限となります。
ここは間違えやすいところですが、在留資格が「永住者」でも、外国人雇用状況の届出は必要です。「日本人の配偶者等」、「定住者」など、就労制限のない在留資格についても同じです。
一方、「特別永住者」「外交」「公用」については外国人雇用状況の届出の対象外です。
「永住者」と「特別永住者」は名前が似ていますが、届出上の取扱いが違うので注意をお願いします。
ここも非常に間違えやすいポイントです。たとえば在留資格「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる「技人国」の外国人社員が退職した場合はどうなるのでしょうか?
通常の雇用関係にある外国人について、会社が労働施策総合推進法による外国人雇用状況の届出を行う場合には、会社は入管への「所属機関による届出」の対象から除外されています。つまり、通常の外国人社員については、「会社 → ハローワークへの外国人雇用状況届出」を適切に行えばよく、同じ退職について会社から入管へ「受入れ終了」の届出を重ねて行う必要はありません。
一方、雇用関係ではなく役員として受け入れている場合など、外国人雇用状況届出の対象とならないケースでは、所属機関による入管への届出が問題となることがあります。
会社がハローワークへ届出をしたからといって、外国人本人の届出まで済んだことにはならないので注意が必要です。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」、「技能」、「介護」、「研究」、「特定技能」などの在留資格を持つ外国人が退職した場合、本人は原則として、会社との契約が終了した日から14日以内に出入国在留管理庁へ「所属(契約)機関に関する届出」を行う必要があります。
したがって会社としては、退職する外国人に、「会社の手続きとは別に、あなた自身も入管への届出が必要です」と案内してあげるとよいでしょう。オンラインの電子届出を利用することもできます。なお、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」など、身分・地位に基づく在留資格の人については、退職したことを理由とするこの届出は必要ありません。
在留資格が「特定技能」の場合は、通常の外国人社員より会社側の届出が増えます。特定技能外国人との雇用契約が終了した場合、特定技能所属機関である会社は、契約終了から14日以内に入管へ、「特定技能雇用契約の終了に係る届出」を行わなければなりません。
これはハローワークへの外国人雇用状況届出とは別の手続きです。したがって特定技能外国人が退職した場合には、原則として、「ハローワークへの届出 + 入管への特定技能の届出」の両方を確認する必要があります。
特定技能では、もう一つ注意したいのが、「受入れ困難に係る届出」です。
会社の経営上の事情のほか、外国人本人の死亡、病気・けが、行方不明、帰国などによって、特定技能外国人を引き続き受け入れることが困難になった場合などには、この届出が必要になります。原則として、雇用契約を終了する前に提出します。
一方、外国人本人の自己都合退職の場合には、原則として「受入れ困難に係る届出」は必要ありません。つまり自己都合退職であれば、「特定技能雇用契約終了の届出」は必要ですが、「受入れ困難に係る届出は原則不要」になります。
技能実習についても、通常の外国人社員とは扱いが異なります。
技能実習の途中で退職などにより技能実習を続けることが困難になった場合には、「技能実習実施困難時届出」が必要になります。団体監理型の場合、実習実施者である会社は、技能実習を続けることが困難になったときは速やかに監理団体へ通知します。その後、監理団体が外国人技能実習機構(OTIT)へ「技能実習実施困難時届出書」を提出します。
企業単独型の場合は、実習実施者である会社自身が外国人技能実習機構へ届出を行います。技能実習生本人の都合による退職であっても、技能実習の継続が困難になれば制度上の対応が必要になるため、「本人が辞めたいと言っているから通常の退職処理だけでよい」と考えないことが重要です。
外国人が会社を退職したからといって、退職した日に在留資格や在留カードが自動的に無効になるわけではありません。たとえば「技術・人文知識・国際業務」の外国人が退職し、同じ在留資格に該当する会社への転職活動を行うことも考えられます。ただし、「技術・人文知識・国際業務」など入管法別表第1の在留資格については、正当な理由なく、その在留資格に基づく本来の活動を継続して3か月以上行っていない場合、在留資格取消しの対象となる可能性があります。ただし、「3か月経過したら自動的に在留資格が取り消される」という意味ではありません。
転職活動を続けているなど、活動を行っていないことについて「正当な理由」が認められる場合には、取消しの対象にならないことがあります。したがって会社から退職者に、「在留期限までは何もしなくても大丈夫です」あるいは反対に、「会社を辞めたらすぐ帰国しなければなりません」と一律に説明するのは避けた方が良いと思います。
外国人社員の退職手続きで大切なのは、「会社が行う手続き」と「外国人本人が行う手続き」を分けて考えることです。また、「技人国」、「特定技能」、「技能実習」では必要な手続きが大きく違います。
外国人社員から退職の申出があったときは、通常の退職処理を進める前に、まず在留カードを確認し、「この外国人の在留資格は何か」から手続きを整理することをおすすめします。
外国人を雇用したいが、手続きがよくわからない、どのような書類を作成したらいいのかなど、お困りの場合には是非、加賀田行政書士事務所までご相談ください。
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