飲食店を経営されている方の中には、日本人の店舗スタッフの確保が難しく、外国人を正社員として雇入れたいと考えていらっしゃるのではないかと思います。
では、外国の方を正社員として雇入れるには、どのような方法があるのでしょうか。
①調理師として雇う
②ホール担当や調理補助として雇う
③内勤事務員として雇う
アルバイトとして日本で非就労系(就労することを本来の目的としていない)在留資格、例えば「留学」や「家族滞在」で在日している方を雇うことはできますが、これは「資格外活動」という許可を得た方を、原則的に週当たり28時間の範囲内で働いて頂くことになります。もちろん風俗営業等では雇用することはできません。
飲食店の場合には、②のホールスタッフや調理補助として、アルバイトではなく、正社員を雇いたいことが多いと思います。しかしながら、アルバイトとしての雇入れは容易ですが、正社員としての雇入れには難しいものがあります。
しかし正社員としての雇用契約を結び、「特定技能外国人」として飲食店のホール担当や調理補助として担当してもらうことが可能です。
○特定技能制度とは
特定技能制度とは、国内の人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度で外食業もその分野として認められています。
外食業でホール担当や調理補助として雇いたい場合には、主として「日本での生活や従事しようとする業務に必要な日本語」を持ち、「従事する業務に必要な程度の知識や技能」を持った外国人を採用することになります。これは、その日本語や技能に関する試験に合格した外国人や技能実習2号を修了した外国人と雇用契約を結ぶ形になります。
〇飲食店が特定技能外国人を受け入れるための条件
飲食店が特定技能外国人を受け入れるためには大きく5つの条件があります。
これだけ見ると、ご自身の会社(飲食店)では到底無理!と思われる項目もあるかと思いますが、「登録支援機関」に支援を委託する場合には、基準を満たしたものとみなされるものもあります。
①受け入れる飲食店が労働関係法や入管法令、その他の刑法等の法令を遵守しており、特定技能外国人を受け入れる適性があること
②中長期在留者の雇用経験がある若しくは経験のあるものを支援担当として雇用していること
③受け入れた外国人に対して適切な支援を行うこと
④日本人と同等以上の給与や希望があった場合の休暇を与えること
⑤食品産業特定技能協議会に入会すること
とても、漠然としていますが、①はざっくりいうと下記のような事項があげられます。(その他にもあります。)
・労働、社保、租税等の関係法令を遵守している
・1年以内に非自発的離職者や行方不明者を発生させていない
※非自発的離職・・・会社都合で解雇されたり、倒産や雇止めなどの理由で失業したりすること
・過去5年以内に一定の刑罰を受けたりしていない
・直前期が債務超過になっていない など
②の「中長期在留者の雇用経験があること」ですが、中小企業が受入機関(特定技能外国人を受け入れることのできる会社(飲食店))になるためには、過去2年間において中長期在留者(日本に3ヶ月以上在留する外国人のうち、入管法上の在留資格を有する人)の受け入れまたは管理を適正に行った実績がある必要があるということです。初めて、外国人労働者を受け入れる中小企業には、このような実績がないことも多いのですが、先に述べたように「登録支援機関」に支援を委託する場合には、この基準を満たしたものとみなされますので、ご安心ください。
次に③の適正な支援についてですが、こちらに関しては様々な対応を行うことが求められますが、こちらも「登録支援機関」に委託することでほぼクリアすることが可能です。
適正な支援には、以下のようなものがあります。
・受け入れた外国人が理解できる言語で支援を行う
・外国人(1号特定技能)への支援計画を作成する
・事前ガイダンスを実施する
・出入国時に空港などからの送迎を行う
・住宅確保の支援を行う
・日本での生活や行わなければならない届出等への適切な情報提供を行う
・銀行口座の開設や携帯電話の契約など必要な契約事項の支援を行う
・日本語を学習するための機会や情報を提供する
・日本人との交流するための機会や情報を提供する
・定期的に面談を行う
・会社都合で解雇されたり、倒産や雇止めなどの理由で失業するケースで転職支援を行う
上記に記載したうち、「支援計画」はほぼ、上記の適正な支援に関する計画書を作成することになりますが、登録支援機関に全面委託する場合には、登録支援機関が作成してくれます。
④の「日本人と同等以上の給与や希望があった場合の休暇を与えること」についてですが、特定技能外国人を雇用する場合には、日本人が働く場合の報酬と同等額以上であることや労働時間に関しても通常の日本人と同等に扱う必要があります。
また、一時帰国を希望した場合には、有給休暇やそれを超える場合には、無給休暇を取得させる必要があります。また、本人が帰国のための旅費を負担できない場合には補助をする必要もあります。その他にも細かな基準があります。
⑤の食品産業特定技能協議会への入会に関しては、受け入れる外国人の在留諸申請の前に、協議会の構成員になることが必須条件です。加入に際しては、審査等で一定の期間が必要になります。
特定技能制度は少し複雑で、わかりにくい部分もあります。しかし、外食産業や他の産業分野の人手不足解消のために作られた制度です。
日本人のスタッフの確保が難しく、ホールや調理補助等のスタッフとして外国人を雇用したいとかお考えの外食産業の方は、加賀田行政書士事務所まで是非ご相談ください。